今から十七〜八年も前のこと。神奈川県S市内に住み始めた私。新設のアパートを借り仕事も軌道に乗りかけた5月の半ば。夜遅くに帰宅しTVをつけながら軽くビールなぞ飲んでいると天井の方からカリッ、ピキッといった音がする。新しい建物だし木材の歪む音だろうなどと高をくくっていたが、それから何日かたった明け方四時ごろ枕元を人が歩きまわる気配がする。当初は気のせいかと思っていたが一週間連続の同時刻出現に私は、すっかり参ってしまった。7日めの四時、やはり、現われた人の気配。目を開けて見ると、そこには見知らぬ中年女性の影。痩せこけた幽霊のようだった。意を決した私はその気配に向かって怒鳴りつけた。「うるせえぞ!毎日、いい加減にしろ。てめえ誰だ!」すると、その幽霊(?)「若い男が一人でいるから」と宣う。「大きなお世話だ出てけ!」散々、口汚い罵り合いをした挙句、幽敵はスーと消えていった。身体が軽くなる。それきり奴の早朝訪問はなくなった。後日、地元の古い住人から、アパートができる以前に、この土地にあった電気工事店の奥さんが私の見た幻と容姿が、そっくりだと聞かされた。
今から十七〜八年も前のこと。神奈川県S市内に住み始めた私。新設のアパートを借り仕事も軌道に乗りかけた5月の半ば。夜遅くに帰宅しTVをつけながら軽くビールなぞ飲んでいると天井の方からカリッ、ピキッといった音がする。新しい建物だし木材の歪む音だろうなどと高をくくっていたが、それから何日かたった明け方四時ごろ枕元を人が歩きまわる気配がする。当初は気のせいかと思っていたが一週間連続の同時刻出現に私は、すっかり参ってしまった。7日めの四時、やはり、現われた人の気配。目を開けて見ると、そこには見知らぬ中年女性の影。痩せこけた幽霊のようだった。意を決した私はその気配に向かって怒鳴りつけた。
「うるせえぞ!毎日、いい加減にしろ。てめえ誰だ!」すると、その幽霊(?)「若い男が一人でいるから」と宣う。「大きなお世話だ出てけ!」散々、口汚い罵り合いをした挙句、幽敵はスーと消えていった。身体が軽くなる。それきり奴の早朝訪問はなくなった。後日、地元の古い住人から、アパートができる以前に、この土地にあった電気工事店の奥さんが私の見た幻と容姿が、そっくりだと聞かされた。